〜皮膚のアポトーシス(能動的な細胞死)について〜
皆さんは、細胞に“死のプログラム”が遺伝としてきちんとセットされていることはご存知でしょうか。“死のプログラム”というと、かなりネガティブなイメージを持たれるかもしれませんが、これは人間が生きていく上で非常に重要なだけでなく、美容、とりわけ“キレイな肌=正常な皮膚”を理解するためにもとても大切なキーワードとなります。
長野 美顔 クリニック 皮膚細胞
細胞の“死のプログラム”を語る前に、まずは細胞の「生」を推し進める現象をおさらいしましょう。それは、細胞が増殖する時のDNAの複製の機構、特定の遺伝子が働いて細胞が特殊な機能を獲得していく分化の機構、さらに遺伝子のDNAに傷がついたときにそれを修復する機構などです。
遺伝子であるDNAを複製して分裂を起こし、二つの娘細胞に増えていく事。なお「成長」の英語もgrowthで、この場合は単に生体系の増加を意味する。例えば多細胞生物が成長する場合、細胞数の増加(増殖)と細胞自身の成長という二つの面がある。
細胞が増殖を停止して、特定の細胞機能を果たす様になること。
このように、「生」を推し進める現象だけでなく、細胞はさまざまな状況を自ら判断して「死」を決定し実行していく機構が、細胞の“死のプログラム”と呼ばれるものです。
細胞死の研究は、最近とくに盛んです。それは、ガン、エイズ、アルツハイマー病といった、現在、社会的に大問題となっている病気の根底に、細胞死の異常があることがわかってきたからです。
ガンは、死を忘れた細胞の集団と捉えられるし、エイズの場合はHIVの感染によって免疫細胞が死ぬ為に免疫不全が起きます。アルツハイマー病では、神経細胞が異常な頻度で死んでいきます。そういったことから、医学・薬学関係の研究者がこの分野に大勢入ってきているようです。

長い間、細胞が死ぬということは、傷つけられたり、毒物を浴びたりした細胞が崩壊するというイメージでしか捉えられてきませんでした。しかし、30年ほど前にこうしたイメージとはまったく違うタイプの細胞死があると指摘されました。
傷害や毒物による、いわば事故死の場合は、細胞は膨らみ細胞膜が破れて中身が溶け出してしまい、その中身に触れた周りの細胞が炎症を起こすなどの負の連鎖反応がおこります。ところが、これに対して、細胞が縮んで断片化され、ついには周りの細胞に吸収されるという細胞の死に方が見つかったのです
特定のタンパク質やDNAが規則的に分解されることによって、細胞が小さな細胞片になること。
発見者は、この死に方を見て、細胞が自ら死を選び、きちんと手順を踏んで死を実行していると考え、「アポトーシス」(自死)と名付けました。
アポは「離れる」、プトーシスは「落ちる」という意味で、枯葉が落ちる様子を表すギリシャ語です。しばらくは注目されていなかったのですが、最近ではガンなどの病気との関連がわかったこともあって、研究は世界中で盛んに行われています。
また、病気以外のさまざまな生体現象も、アポトーシスによって理解されるようになりました。たとえば皮膚や肝臓などの細胞は、老化するとアポトーシスで除去され、新しく出来てきた細胞と入れ替わるというわけです。
二つの細胞死
細胞の死と一言でいいますが、細胞には大きく分けて二通りあります。

血液の細胞や肝臓の細胞、皮膚の角質細胞などのように、もとになる幹細胞があって、そこから絶えず新しい細胞が供給される再生系の細胞と、心筋細胞や神経細胞のように一生入れ替わる事の無い非再生系の細胞です。
多くの臓器や組織で、古くなった細胞は新しいものに置き換わっている。このとき細胞を増殖によって供給する源になる細胞。例えば皮膚の最表面にある角質細胞は常に新しくなっていくが、その細胞は基底層にある母細胞(幹細胞)から作られる。
再生系細胞は、その機能を果たして老化すると死んでしまい、新しいものに置き換わります。(*角質層を形成する角質細胞)そうした細胞の循環によって、皮膚なら皮膚、肝臓なら肝臓の機能がキチンと保たれています。
けれども、心筋細胞や神経細胞の場合は、その死は個体の死に直結しています。
非再生系細胞の死は、再生系細胞の死とは次元が違います。最新の研究結果でも、細胞が死ぬ時の機構もやはり再生系の細胞とは違うことがわかってきています。
細胞死の機構を指す「アポトーシス」という言葉もかなり一般化してきましたが、この言葉は、再生系細胞の死に方を示すのにふさわしく、非再生系細胞の死に方は、これとは区別して「アポビオーシス」と呼ぶべきでしょう。
非再生系細胞の死が遺伝子としてプログラムされていることによって、個体は必ず死んでいき、新しい個体に置き換わる。その循環によって、ある生物種の繁栄が保たれているとみることもできます。
細胞の死に方の一つで、能動的な細胞死、あるいは「細胞の自殺」といわれている。
アポトーシスが再生系細胞の死であるのに対して、神経細胞のような非再生系細胞の死の様式を表す。
皮膚細胞のアポトーシスの重要性 長野
皮膚は、いつ見ても組織学的には同じ姿をしています。ところが構成している細胞はたえず入れ替わっています。私達が直接触れて、見る事の出来る再生系の細胞の代表と言っていいでしょう。さながら、日めくりカレンダーのように、きまった周期でこの入れ替えは繰り返されます。そして、日めくりカレンダーが一年365日分の枚数しかないのと同様に、皮膚などの再生細胞もその分裂できる回数には制限があります。それは分裂寿命と呼ばれています。
一方、そのように入れ替わらない非再生系細胞は、神経細胞や心筋細胞などで、生まれてから何十年も生き続けます。神経細胞が入れ替わると記憶が無くなってしまいますし、心筋細胞が入れ替わったら、その時に心臓が止まってしまうかもしれない。どちらも入れ替えはききません
心臓を構成する細胞で、人では平均的な一生の間に30億回収縮する。アクチンフィラメントとミオシンフィラメントというタンパク質の繊維の滑り機構によって収縮する
神経細胞や心筋細胞もいつかは死にますが、その死は、皮膚の細胞の死などと違って、個体の死につながる可能性があるわけです。これらの非再生系の細胞の寿命は分化寿命と呼ばれます。個体の寿命は、これら分化寿命と分裂寿命という二つの細胞寿命の総和によって決定されると考えられます。ただし、どんな総和になるかはかなり複雑です。
例えば、どんどん酒を飲んで、肝臓の細胞が分裂寿命にきてしまった人は、ほかの臓器は健全でも、個体としては統制がとれなくなって死んでしまうでしょう。

また、心臓を使い過ぎて、心筋細胞の分化寿命がきた人は、心臓が止まって死ぬでしょう。どれかが限界にきたら、個体の寿命は尽きてしまいます。さらに、限界がどう決まるかについては、遺伝的な形質に支配される部分もかなりあります。

そして話を私の専門とする“皮膚”に戻しますと、擦(こす)る、剥(は)ぐ、溶(と)かす等々の外部刺激を皮膚に加え続ければ、わずか0.2mmくらいの薄さしかない表皮細胞は、あっというまに分裂寿命にきてしまうことでしょう。
皮膚は人体の中で最大の臓器です。他の臓器が健康でも、皮膚だけが寿命を迎えてしまう、あるいはかなりの高齢になってしまうと言う事が現実問題として多くの人々の身におきています。
しかし悲しむべき事は、いまだに、『皮膚の最表面である角質層は2週間サイクルでターンオーバーを繰り返す。だから、この最上部の角質がたまると皮膚がくすんだりニキビができたりする。そんな時は、擦る(洗顔)こと、剥ぐ(ピーリング)こと、溶かす(強アルカリ性の商品使用)ことを一生懸命しよう。そうすれば古い角質がとれて新しいきれいなお肌になるよ。』といったような内容の広告やセールストークを色々な場所で見聞します。恐ろしいことです。限りあるものを、あたかも無限のように錯覚させます。
前述の日めくりカレンダーを思い浮かべてみてください。1月1日から始まって、1日ごとに剥いでめくっていく日めくりカレンダーを、今日の表紙が汚れてきたといって、一挙に何十日分も剥いでしまえば、普通の人がまる一年かけて12月31日で終わるカレンダーが、数ヶ月、あるいは数週間で終わりになってしまう。このような馬鹿げた行為と一緒です。
ただ、日めくりカレンダーはまた買ってくれば良いでしょうが、失われた細胞の分裂寿命のカウントは、もとに戻すことは不可能です。
自然のリズムの重要性 きれいな肌
自然の調和というのはいつでも驚異的ですが、その調和をつかさどるのはやはり様々なリズムです。
手の平を胸に当ててご自分の心臓の鼓動を確認してみてください。その心臓の鼓動を例にとっても、このリズムだからこそ体内にあまねく血流が通り、今もこうして“生きる”ということができるのです。
“キレイな肌=正常な皮膚”もまったく同じです。何故一定の周期、リズムで角層はターンオーバーを繰り返すのか?それが人間が健康に生きていくために最適だからです。最適とは調和のとれた自然な状態です。
この調和のリズムバランスが崩れた時に、肌トラブルは発生し、その調和のバランスが崩れた期間が長ければ、やはりそのバランスを回復させるにはそれなりの期間がかかるのは自明の理です。
長野美顔クリニック メッセージ
肌トラブル解消にあせりは禁物です。ゆとりを持った対応こそが、結果的に一番スピーディーな美肌獲得の方法の道なのです。長野美顔クリニックでは人間本来の美と健康について、自然物の恩恵を大いに活用し、論理的に日々研究を積み重ねています。
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