〜免疫のメカニズムとスキンケアについて〜
ここまでわかってきた“免疫” 免疫系の話は非常に複雑で難解です。
なおかつ、免疫の世界はミクロの世界であり、私たちの目には見えない世界です。
かろうじて試験管の中で反応を確認し、仮説を立てながら実験を繰り返した後に、真実が浮かび上がってくる世界なのです。しかし、近年この分野の進歩・発展は目覚しく数年前まで極々常識のように思われていたことも、まったく違う視点からのものであったとか、謎であった事も次々と解明されてきています。
今まで、免疫系は人体にとって常に有利に働く“生体防御システム”と して理解されてきました。つまり、リンパ球からの抗体と病原菌などの抗原とが結合し、病原菌からの感染を防いでいるのが免疫系だと言う固定観念がありました。しかし、最近の研究では「自己」と「非自己」を見分けて「自己」の確立をめざすシステムであることがわかってきました。免疫系とは人体のもう一つのネットワークであり、病原菌やウィルス等の感染を防ぐことも、あくまで免疫反応の一部にしかすぎないのです。
免疫とは、非自己(敵)の存在を認識する事によって免疫細胞が刺激をうけ、さらに細胞から分泌される生理活性物質(サイトカイン)によって新たな刺激を受けながら、カスケード状に連なっていく(連鎖反応)生体反応の事です。
普段は気に留めていなくても、私たち人間には、精神や肉体をコントロ ールしつつ、自分の生命を守るばかりか、種の保存を目的として遺伝子情報を子供へと伝えていく本能的な仕組みが備わっています。コンピューターに例えれば、人間にとっての基本ソフト(OS)であり、全体を束ねるネットワークシステムといえるでしょう。
神経組織によって構成される神経系と、ホルモンによって情報を伝達する内分泌系がこのネットワークシステムに相当しますが、それらと並んでもうひとつの重要な仕組みが免疫系というネットワークシステムなのです。

 (抗体をつくるBリンパ球・胸腺を経由するTリンパ球)
1970年代の初めには、免疫系が2つの大きなシステムからできていることがわかってきました。ひとつは北里柴三郎が発見した抗体分子をつくるBリンパ球であり、もうひとつが胸腺を経由してできるTリンパ球です。
これら2種のリンパ球は機能的に役割を分担しており、守備範囲も異なります。
Bリンパ球は抗体をつくり、これをいわばミサイルのように発射し、バクテリアや細菌を直接溶かしてしまいます。
一方、Tリンパ球はウイルスに感染した細胞や癌細胞を退治したり、Bリンパ球に抗体をつくらせる指令を出すなど、非常に重要な働きを担っています。
つまりBリンパ球の守備範囲は「自己」から非常に遠いものであり、Tリンパ球の守備範囲は感染によって「非自己」となった、きわめて「自己」に近いものであることがわかります。「自己」と「非自己」を識別するいわばアンテナに相当するのは、抗原 レセプター(受容体)というもので、Bリンパ球やTリンパ球の細胞表面に発現しているタンパク質分子です。そして、この受容体こそが多様性と特異性という免疫系にきわめて特有の性質をもっているのです。いったいどれぐらい多様な抗原を特異的に認識することができるかというと、B細胞(Bリンパ球)で約1,011、T細胞(Tリンパ球)では約1,015もの種類の受容体をもっています。
これはありとあらゆる種類の抗原に対処可能な天文学的な数だと言えます。
私たち人間の体を支配している遺伝子がたかだか105のオーダーであるのにもかかわらず、免疫系は1,015もの多様性を獲得しているわけです。
どうやって105の遺伝子で1,015もの多様性をつくり出すのかは、生物学的な矛盾であり、免疫学における最大の疑問でした。
そしてこの謎解きをしたのが、ノーベル賞を受賞した利根川進博士が発見した“遺伝子再構成”という遺伝子発現機構のメカニズムです。
私たちの体を構成するタンパク質のすべては、それまで1つの遺伝子が1つのタ ンパクをつくり出すと思われていました。
ところが、受容体の多様性をつくり出す可変部をコードする遺伝子だけは、いくつかの遺伝子断片が寄せ集まって再構成されていることがわかったのです。
しかもこの遺伝子の組み合わせは合目的にプログラムされたものではなく、まったくランダムです。このことからも、免疫系が感染防御を目的に外的環境から学びとって発展してきたシステムではないということがよくわかります。
こうして免疫系は、現在地球上に存在しないような異物に対しても、対処できるトータルレパートリーを用意し、来るべき未来に大きなアドバンテージを獲得しました。
しかし、これは半面、「自己」に対しても反応してしまうリンパ球をもつくり出してしまうという矛盾に満ちたシステムで もあります。
このままだと、自分の免疫系によって「自己」の組織が攻撃を受ける自己免疫病を引き起こし、人間は死に至る可能性があります。
そこで、免疫系はもうひとつ別のシステムを採用しています。それは胸腺における“T細胞の教育機構”と呼ばれるもので、自己と反応するような細胞集団はそこで殺され、「非自己」のみに反応する約1%のT細胞のみが未梢組織へ出ていくというシステムです。胸腺は一方でT細胞のトータルレパートリーを用意し、また一方では自己反応性T細胞を除去するという2段構えのシステムを採用したのです。
すなわち胸腺こそが「自己」と「非自己」を識別している組織であった わけです。
リンパ球は免疫反応を司る主役ですが、そのなかで重要な臓器は胸腺です。
胸腺は平べったい器官で、心臓の上部、胸骨上部の裏にあります。
胸腺は発生学的には、顎(あご)のある有顎類から出現します。
八つ目う なぎや、めくらうなぎは円口類で顎がありません。
彼らは掃除機のように餌を吸って消化しています。しかし、それでもリンパ球のようなものがあって免疫系を司っています。ハエなどでは、毒を出すとか食べて消化するといった原始的なレベルの免疫システムがあります。
要するに、円口類までは細胞が異物の所へ行ってそれを食べる。
爬虫類やほ乳類などの高等生物になって顎ができ、おそらく、いろんな物を噛み砕いて食べるようになったために、複雑な免疫システムも備わって行ったのではないかと思われます。
食べる餌の種類が増えて、ただ単に吸って消化するのではなく、自分で積極的に噛み砕いて食べるようになった結果、身体の中に異物が山のように入る事になった。
そうすると、接触して区別するだけでなく、具体的に抗原を認識して異物をやっつける必要性が増したのではないかと推察されます。
特異性とは、免疫細胞が特定の異物や毒素と免疫反応を起こす際の、厳密な反応性を指します。特定の非自己とだけ反応し、シグナルを受け取って攻撃するのです。
たとえば、ジフテリア菌を認識し、排除に乗り出す免疫細胞は、破傷風菌には見向きもしません。
また、破傷風菌を認識・排除する免疫細胞はジフテリア菌にはそっぽを向きつづけます。天文学的な数の異物を識別する能力をもっていると考えられる免疫系ですが、一対一の免疫細胞では実に強い特異性があるのです。
しかし、異物や毒素の数は尋常ではありません。
そこで、免疫系は多様 な非自己に反応できるように様々な免疫細胞を用意し、対処しています。その数は、実に一兆種類とも言われています。
これが免疫の多様性です。
生体は、ホルモンをはじめ、さまざまな機能を備えた不思議なフィードバックシステムをもっていて、一定の状態を維持するメカニズムとして働いています。こうして、生体のホメオスタシス(恒常性)が保たれているのですが、特に免疫系の場合、そのシステムの調和が見事に取れています。
そして、免疫の不思議といえば、なんといっても、免疫系が、臓器の形をとることなく明確な形でネットワークシステムを構築していない事です。
免疫細胞を構成するリンパ球(白血球)は合計1キログラム、一兆個の集団ですが、神経系のように連絡し合う神経繊維などは持っていません。
まさに、液体の中をただよう浮遊細胞の群れでありながら、この大海の中でバラバラの細胞同士が密接なコミュニケーションをとり、連携し、協力し あう様は驚異というほかはありません。

最近は日本人の3分の1が何らかのアレルギーにかかっているといわれています。
たくさんのスギ花粉が空中を舞うようになる春先には、しつこいクシャミを繰り返し、鼻や眼を真っ赤にした花粉症の人々が増加します。
アレルギーの症状は、蕁麻疹(じんましん)、皮膚のかゆみ、喘息、鼻炎、腸炎などですが、このアレルギーもまた免疫反応の一つの結果なのです。
生体内では、アレルギーを起こすアレルゲン(アレルギーの原因となる抗原)によってつくられる抗体の1種(免疫グロブリンE:IgE)が、気管や消化管、皮膚などにある特殊な細胞(マスト細胞)の受容体に結合します。
そこへ抗原がやってきて、この抗体に結合する事により、さまざまなアレルギー反応惹起物質が局所にばら撒かれます。
そして、血管や気管の平滑筋が収縮する事により、蕁麻疹や喘息の症状が現れるのです。普通、花粉のような抗原性の弱いアレルゲンには、多くの人がもつMHC分子は結合しにくいのですが、アレルギーを起こしやすい(IgEをつくりやすい)人のMHC分子は、好んでアレルゲンを結合してしまいます。
だからアレルギー免疫反応が始まり、アレルギー症状が出るのです。
免疫反応は、わかりやすくいえば「ドミノ倒し」に似ています。
花粉、細菌、ウィルス感染細胞、ガン細胞の情報が免疫細胞に分子レベルの情報として伝えられ、サイトカイン(生理活性物質)という言葉を介して仲間の免疫細胞を刺激し、次々に連鎖反応を展開して行くのです。
免疫系はあくまで自己と非自己を区別し、非自己を排除するシステムだけに、時に人間を守ってくれるのと同じメカニズムによって人間は多いに苦しむことになります。
免疫反応が引き起こす結果は実に多彩であり、それらの結果の内のいくつかが、湿疹、蕁麻疹、炎症等の肌トラブルという目に見える形であらわれるのです。
よく、「良い免疫」「悪い免疫」という表現の仕方があります。前者は感染症を退治する免疫、後者はアレルギーや自己免疫疾患などを引き起こす免疫をさしていると思われます。ですが、そうした言い方はいわば私たちの都合からなされているに過ぎません。あまりに主観的過ぎると言わざるをえません。
しかし、そうは言ってもこの免疫機能をどうにかしないことには、特にアレルギー体質の場合、肌トラブル解消は困難です。
そして、その1番の答えが、「非自己」つまり異物を皮膚内に侵入させない事です。
あたりまえと言えばあたりまえのことですが、この事をキチンと理解した上でのスキンケアが長野美顔クリニックノウハウの真骨頂と言えます。
皮膚内に異物を侵入させない為のバリア機能は、正常な皮膚であればしっかり備わっていますが、強い乾燥、過剰な洗顔、アルカリ度の強い洗顔材の連用・常用、ひっかく・こする等々の人為的な動作により簡単に破壊されてしまいます。
これを修復・維持する為の行ないが、「保湿」「保護」「清潔」を基本としたスキンケアであり、スキンケアの限界を超えてしまった肌トラブルを、この日常のスキンケアで対応できるレベルに落としこむのが、長野美顔クリニックノウハウなのです。
長野美顔クリニックノウハウの普遍性はまったく揺らいでいませんが、長野美顔クリニックでは日々研究、勉強、実践を継続しています。何故なら、それこそが皆さんに“健やかで美しい肌=正常な皮膚”を提供していくことをメイン業務とする我々の責務であると強く認識しているからです。
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